2013年5月30日木曜日

【読書記録】中国経済論


堀口正(2010)『中国経済論』世界思想社

本書は14章から構成されており、中国経済の概要、農村経済、地域格差と貧困問題、対中経済協力、人口問題、財政問題、日中ものづくりの特徴、戸籍制度と労働移動、人民元切り上げの効果、環境問題、観光開発、貿易構造、中国企業の国際化、WTOからFTAへという題で中国の現状について詳しく述べられている。

1949年に共産党政権による中国が成立してから1978年までの約30年間は「自力更生」(自らの力で国家を発展させる)の時期、1978年から今日までの約30年間は「対外開放」(外国の資本や技術を通じて国家を発展させる)の時期に区分できる。
1949年から1978年までの時期は、4952年の経済復興期、5357年の第1次五カ年計画期、5860年の大躍進期、6165年の経済調整期、6676年の文化大革命期、77年前後の洋躍進期に分けることができる。
そしてこれまでの「自力更生」による社会主義建設が挫折し、対外的な開放政策を通じて経済成長が実現し、中国型の社会主義市場経済が形成されていく。

農村経済の章では、中国の社会主義が人民公社体制を中心に展開していった経緯を述べている。
1次五カ年計画以降、互助組、初級社、高級社、そして人民公社へと組織の編成替えを繰り返し、同時にこれらの組織を中心として農業経営が行われていた。
しかしながらこうした農業経営では、生産が政府の政策に基づいて行われていた為、経営効率はよくなく、消費者の需要を満たすものではなかった。
1978年以降、これらの矛盾や問題点を解決するために「農業生産請負責任制」が導入され、自由に市場で販売することを認められたことから農民の生産意欲を刺激し、食糧生産量は大きく増加していった。

中国の財政制度は1980年代まで「統収統支」「高度集中管理」の原則のもとで行われていた。
統収統支とは、
(1)いっさいの収支項目、支出方法と支出指標をすべて中央が統一的に設定すること、
(2)いっさいの財政収支はすべて国家予算に組み入れられ、収入はすべて中央に上納され、支出は中央から支給され、年度末の余剰金も基本的にはすべて中央に上納されること、
(3)財政的権限は中央と大行政区に集中しているが、中央を主とすること、
である。
一方改革開放後は、「財政請負制」の実施により財政の地方分権が進展し、1994年以降は「分税制」の実施により、地方分権と中央集権が混在するようになっている。


1978年の対世界における中国の貿易シェアはわずか0.8%であったが、2007年には約10倍の7.7%にまで増加し、アメリカ、ドイツに次ぐ貿易大国になっている。
またその間に輸出品目も一次産品から工業製品へとシフトし、構造上も、原材料や半製品を外国から輸入して中国でそれらを加工して輸出するという「加工貿易」へとシフトしている。しかしながら、そうした輸出の多くは外資系企業に支えられており、2007年の外資系企業の輸出額シェアは約60%で、そのうち機械製品の輸出については70%台に達している。
中国の企業が外資系企業に代わって輸出の多くを支えるようになることが今後の課題であろう。
200112月にWTO加盟を果たした中国は、当初の予想通り、世界経済との関係を強化し、貿易量を大幅に増加させ、経済発展も順調に進んでいる。
WTOの原則適用のために生じる資源配分の非効率に対する課題については、FTAの締結による政治的な決断も重要である。

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